こんにちは。
今回は木管楽器の「割れ」の修理についてお話したいと思います。
この冬も修理のご依頼をいただきました。
では、なぜ冬に割れが多いのでしょうか?どの様に防げば良いのでしょうか?割れの原因や対策についてお話していきます。
これからの割れ対策としてご参考頂ければ幸いです。
割れの原因、対策について
①管体内側、外側の膨張率
楽器の割れは、冬によく起こります。それはなぜでしょう?
木は湿度、温度によって収縮、膨張するという特徴があります。
乾燥している時(湿度)、低温の時(温度)、木は収縮します。
多湿の時(湿度)、高温の時(温度)、木は膨張します。
木管楽器を冬に演奏すると、乾燥し冷たくなった管の外側は収縮するが、湿った温かい息が入った管の内側が膨張します。この外側と内側の膨張率の差によって、管の外側の割れがおこるのです。
②水分(湿度)
割れの原因の一つ、管の内側の膨張ですが、管の内側の水分(多湿)が膨張をおこします。
スワブを通した後、ペーパーでのお手入れが必要ですが、音孔の水分が取り切れていない事が多いです。(管体は厚みがあり、音孔の中に水分が結構残っています!)そのまま片付けてしまうと、ずっと管の中に水分が留まっているので、割れる可能性は高くなります。
また、音孔にゴミが溜まっていると、ペーパーで水分をとったつもりでも、ゴミに水分が含まれており、結局長く音孔に水分が残っているのと同じ状況です。この状態で片付けてしまうと割れてしまう可能性があります。水分には気をつけましょう!
スワブをまめに通す事を忘れないで下さい!冬場は特に回数を増やした方が良いでしょう。練習中、合奏中、少しでも時間があいた時にスワブを通しましょう!
片付ける前は、もちろんしっかりとスワブを通して下さい。さらに、音孔に水分が残らないよう、しっかりとペーパーでお手入れして下さい。
1年以上調整に出されていない方は、音孔のゴミ掃除を兼ねて調整に出して頂き、割れの原因を取り除いておきましょう!(音孔のゴミは割れの原因だけでなく、音程にも影響してきます!)
③急激な温度変化(温度)
割れの原因の温度による収縮・膨張と言う点から考えて、急激な温度変化は危険です。
この冬皆さんは練習をされる際に、例年以上に換気に気を付けられていたと思います(コロナ対策)。それは衛生上は大変素晴らしい事なのですが、急激な温度変化によって楽器には負担がかかっていたと思われます。
練習中や合奏中、換気によって暖かい部屋が急激に冷えてしまい、楽器も急激に冷えてしまったものの、そのまますぐに練習されていたのではないでしょうか?(温度での収縮・膨張、さらには湿度での収縮・膨張もあったと思います!)
また学校の部活によっては換気の理由から、常に厳しい状況下で練習をされていた方も多いのではないでしょうか?(寒い・広い部屋で練習された方、外練に近い方など。)
この冬は上記の様に例年以上に割れやすい環境だったかも知れません。
まず、なるべく温かく、湿度の高いお部屋での練習をおすすめします。冬に寒い部屋での練習は、割れる可能性は高くなります。3月以降、少しずつ暖かくなってきますが、まだまだ寒暖差が激しいので安心しないで下さい(急に寒い日は訪れます)。
部屋が温かいとしても、換気をして急激に部屋の気温が下がった時はお気をつけ下さい。換気を行う際は、軽く握って表面を温めたり、楽器を抱えるなどして楽器の表面の温度を保ちましょう。(この時、キィを曲げないように気をつけて下さい。)
また換気時、再び練習、合奏を始めるのも室温がある程度上がってから始めた方が良いかも知れません。
保管場所にも気をつけられると良いでしょう。極寒の楽器庫はやはり危険です(特に新しい楽器)。人間が心地よい温度、湿度の場所での保管が理想です。(学校の部活だとなかなか難しいのですが…。)

修理前 割れているのが確認出来ます
ワレをチェック
それでは、楽器が割れずにこの冬無事に過ごせたのか、チェックしておきましょう。
・演奏中や演奏直後には割れが大きくなります。時間が経つと割れが見えにくくなる事もあります。演奏後、早めに観察してみましょう!
・ご購入後1年以内の楽器は割れやすいです。新しい楽器はご注意下さい!
・割れは基本的には上管で、それもほとんどが上部です。(まれに、色々な原因で、下管やベルが割れていた事もありますが…。)
・割れがタンポの下やキィの下に隠れていたりする事もあります。(皆さんではチェック出来ない所もあります。見えない場所はリペアマンにチェックしてもらって下さい。)
・新しい楽器なのにキィにガタつきがある時は、管体全体が膨らんでいますので、どこかが割れている可能性があります(新しい楽器に多いです)。
もちろんご自身での微妙な割れの判断は難しいです。一度リペアマンにご相談頂ければと思います。
もし割れを発見された時はなるべく早めに修理に出して下さい。(音孔まで割れている場合は音にも大きく影響がありますよ。)
修理
リペアは、接着剤を使って割れを修正していきます。割れが大きい場合はグラナディラ(クラリネットの素材)の木粉と接着剤を使いながら修正します。基本はこのやり方ですが、場合によってはビスなども使う事もあります。そして、ヤスリなどを使いながら、少しでもダメージなく、美しく仕上げていきます。

修理後 キレイに仕上がりました!
「割れ」でお困りの方は多いと思います。もし「割れ」についてご質問等ございましたら、いつでもご連絡下さい。お待ちしております。
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